06  イニア島南部  クルス・オクタゴーノ

 ――撃たれた。

 機体が大きく揺れ、被弾箇所からは煙が出る。動きのよくなったUCAVに気をとられていると、アランはさっき電子戦機を墜としたRev-53Dの部隊の1機に狙われ、回避も空しく数発の機銃弾を受けてしまった。そして、さらにロックオンのアラートはさっきからずっと続く。遼機のウィリーも他の敵機の相手で手一杯で相互に援護する状況ではなかった。

 ――墜とされる。

 と思った。あの日と同じように。

 急機動を繰り返す敵機を決して逃す事なく、ラウス中佐は思わず舌舐めずりをした。なかなか動きのいいメサリナの新型機だが、この新型機もいただく事にする。
 Lx-01は本来の動きを取り戻して連合軍を圧倒し始めた。敵の主力のF/A-31Cの武装は多少強化されているようだが、Lx-01の機動性には敵わず、次々と駆逐されていった。問題のメサリナの新型機の部隊は自分たちが抑えてさえすればいい。UCAVの攻撃部隊と爆撃隊の要塞への攻撃の道が切り開かれるまで……

 そして、手強い新型はここで墜とせる奴は墜としておく。
 ラウスは、絶対の自信をもってトリガーに手をかけた。だが、突然逆に自分のコクピットにアラートが鳴り響く。
 ロックオンされるやいなや、ラウス中佐のRev-53Dに複数のマイクロミサイルが襲い掛かった。ラウス機は攻撃態勢から一転し、急機動を繰り返したが1発は機体の至近で炸裂した。
 撃墜には至らなかったが、後部から夥しい煙が出てその戦闘力を奪った。
 ラウス中佐が発射方を睨めつけると、敵の新型機の新手が麾下の部隊に攻撃を加えようとしているところだった。見るからに、さっきまでにない手練だと思う。

 「やってくれる……」
 と、ラウス少佐は麾下の部隊に敵との距離をとらせつつ舌打ちする。
 もう十分敵を混乱させ、時間も稼いだ。ラウスは撤退の決め、Rev-53Dの部隊をまとめて離脱していった。

 電子戦機を欠き、不利な状況下ではあったがシェイファー少佐の別動隊はクルスオクタゴーノへの攻撃の主力であろう、新たな方向から低空で侵入を試みたステルス爆撃機の編隊をなんとか見つけ出して撃墜した。そして、全速力で当初に分かれたアランたちの分遣隊と合流した。
 さっきのRev-53Dの部隊との戦闘で多少の被害が出ていた。十機以上が被弾し、数機が撃墜された。混戦していて、詳しい事はまだ分からない。
 少佐は第2空母航空団の各飛行隊の現状を聞きつつ、被害の大きい機体は離脱を勧めた。
 「無理はするな。戦いはここで終わる訳ではない」
 と。



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