03  エレラルド海  空母「エクテシア」

 空母「エクテシア」の第2空母航空団は、緒戦から前線で戦っているが、ここ1ヶ月の戦闘で1人も欠けていない。皆、敵を圧倒して守るものを守り、必ず帰還するという義務をしっかりと貫いていた。
 だが、開戦のあの日だけは違っていた。アランたちがティオニア上空でシェイファーらに助けられたあの日、第2空母航空団はルージアの新型UCAV部隊相手でも互角以上に戦い、多大な戦果を上げた。
 しかし、一方で1個の飛行隊を失っていた。

 第138戦闘攻撃飛行隊。
 アランたちの前任者である彼らは、シェイファー少佐の第316戦闘攻撃飛行隊に次ぐ戦闘力を持っていたらしい。そんな彼らが何故、緒戦で全滅する事になったのか。

 「敵にこだわり過ぎたんだ……」
 と、シェイファー少佐はアランとウィリーにこぼした。

 墜としても墜としても次々と現れて、味方機を墜としいく敵の無人機。F/A-47で自分たちが敵を墜としても、墜ちていく味方を助けられない……
 やがて、第2空母航空団にも撤退命令が出された時、最期まで居残って戦い続けたのが第138戦闘攻撃飛行隊であったという。彼らは守る事に、そして何より敵を圧倒して倒し続ける事にこだわり過ぎたのだという。

 少佐は、アランとウィリーに神妙な面持ちで言った。
 「戦場で、何かにこだわり過ぎると死ぬ」
 と。

 例のUCAV部隊で思い当たる節のある2人はその言葉を真剣に受け止める。
 そんな2人を見て、少佐は
 「心配するな。もう空で俺の部隊からは欠員を出させない」
 とも笑ってみせた。

 「必ず全員連れ帰ってやる」
 と2人に告げ、その心強い後ろ姿を見せて愛機の方へ戻っていった。



  Next-次へ-  

  Prev-戻る-