01  エレラルド海  空母「エクテシア」

 クルス・オクタゴーノ攻防戦から5日後、イニア島東部のエレラルド海に展開する第2機動艦隊空母「エクテシア」に3機の輸送機が着艦した。そして、ともに1人の男が降り立った。
 マーティン・グレイス大佐。
 メサリナ本国から特命を受けて派遣された彼は、着任早々出迎えた第2空母航空団の搭乗員たちにこう言い放った。

 「諸君、奴らが憎いか!? ならば同じものをもって奴らに償わせろ! 私はその力を諸君に持って来た!」
 と。

 クルス・オクタゴーノを巡る戦いは、ルージア軍の勝利に終わった。
 第4波の無人機部隊が中心部で核弾頭による自爆を行い、要塞は対弾道弾用のレールガン、周辺施設も含めて全滅した。
 第2空母航空団もこの戦いで半数以上の機体とパイロットを失った。

 ――奴らを許す事は出来ない。

 隊の中は、ルージアへの復讐と怨嗟に満ちている。
 マーティン・グレイス大佐とともに、「エクテシア」にもたらされたもの。それは、20発の戦術核弾頭だった。
 エトウィス条約で現在、撤廃中のラダン連邦は例外としてどこの国においても核兵器の所有は認められていない。だが、それを祖国は秘蔵していた。
 対弾道ミサイル用のレールガンといった抑止力を持っていたとしても、有事には何が起こるかわからない。前大戦から始まった核の時代に、政府は高度な政治判断をしたのだという。



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