06  グランツ海上空

 ――00:30:00、00:29:59、 00:29:58……

 カウントダウンは、まだ止まらない。

 「全機撤退セヨ!」
 メサリナ軍機にグレイス大佐の怒声が響く。大佐は敵と共闘した自分達に罵声を浴びせ、速やかな撤退を命じた。
 あのUCAVは自爆型で、おそらくラダン連邦に向かっている。そして、最期に出て来たあの新型機が敵の中心だろう。そうアランは反論したが、グレイスはさらにそれに罵声を浴びせる。
 「ラダンの事はどうでもいい! それより東のラインを固めろ」と。

 連合軍は更なる戦禍の拡大を狙っているのか。ここでラダンが報復に出れば、自分達の核使用の事実が薄れるとでも……
 これまでにない、やりどころのない怒り。自分達の戦いは何なのか。
 そんなとき、
 「大佐。私達の任務は敵を倒す事です。大佐も常々そうおっしゃっていたでしょう」
 と、いつものような冷たい声でグレイスに言った。

 「それとこれとは……」
 と、大佐が再び罵倒しようとしたとき、大尉は通信を切ってあの敵編隊の追撃に入った。
 アランが真っ先にそれにならい、他の機もそれに従った。

 「大尉……」
 と、アランは彼女に何か言おうとしたが
 「勘違いするな! 私は敵を倒したいだけだ!」
 という言葉で遮られた。



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