02  ルージア首都ラスノダール  国防省

 その科学者は、嗤いながらそれを起動させた。

 まだ、誰も気づく者はおらず、止める術はすべて彼の頭の中だけ。
 そして、彼がいなくなれば計画は完璧なものになる。
 科学者は、さらに高く嗤った。そして、手に持った銃を自身の頭に押しつけた。
 後はすべて、自分が生み出したものがやってくれるだろう。あの国に対する復讐を。彼は嗤い続け、やがて引き金を引いた。
 1発の銃声。その音が響いた後、部屋からは嗤い声が聞こえなくなった。

 ヴィクター・キャノルド博士は、ルージアでのAI開発の第一人者である。
 民間企業にいた頃に次々と優秀な人工知能を作り上げ、軍に徴用された後は公営企業のロメル社と共同で実戦に耐えうるレベルまでの事が可能な戦闘用AIも完成させた。この戦争でのルージア連邦軍の主戦力であるUCAVやその他の無人兵器部隊設立が実現したのも彼の功績の言っていい。
 そんな彼は、ルージアの国防省の一角でさらに強力なAIの研究を行っていた。連合軍のジャミングにも屈しない、さらに進化を遂げたAIを。

 だが、彼は国防省の一室で変わり果てた姿で発見される。嗤った顔のまま息絶えた姿で。



  Next-次へ-  

  Prev-戻る-