05  エレラルド海

 アランは、発射コードを入力しトリガーのボタンに指を掛ける。コストナーの号令のもと、味方の隊長機は一斉にそれを発射した。何の躊躇いもなく。

 ――撃たなければならない。しかし……

 そのボタンはあまりに重かった。



 発射した機が反転離脱する中、アランだけが発射出来ずに飛んだ。ターゲットの巨人機をロックしたまま。
 彼は、引き金を引くのを躊躇った。

 その内、逆に彼の機が敵機にロックされる。
 「早く発射しろ! 先に撃たなければ撃たれるんだぞ!」
 アラートとともにグレイス大佐の罵声がコクピットに響いた。

 ――そう。それが戦争だ。

 敵。散っていった仲間。守れなかったもの。守るべきもの。
 様々なものが脳裏を巡った。
 そして、彼はそのボタンを押した。



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