02  エレラルド海  空母「エクテシア」

 少女は、再び笑わなくなった。

 艦の雰囲気は、ここへ来たときとは一変した。
 クルス・オクタゴーノでの事で皆は敵を倒す事しか頭になく、補充されて来たグレイス大佐お抱えのF/A-31Cの部隊の隊員たちも大佐自身も同じような振る舞いで「エクテシア」は重い空気に包まれていた。
 少女に写真を撮って来ていた慣わしなどとうになく、そのうち彼女が甲板に出る事もあまりなくなってしまった。

 もはや、エミーに会いに行こうとするのはアランとウィリーぐらいになっていた。任務を終えて、帰還した2人はいつものように後部甲板に行ってみる。すると、そこにはいつも悲しそうな顔で空を見上げている少女の代わりに白衣を着た1人の女性がエミーと同じような悲しげな表情で空を見上げていた。

 クレア・リーバル博士。
 少女の母親であり、敵のUCAVに対抗するための手段を編み出した人物だ。
 博士は2人に気づくと軽く礼をし、自分の研究の成果について彼らパイロットに詫び始めた。
 ルージアのUCAVに対する干渉はもっと強力に出来るはずであったと。もし、自分にもう少し力があれば、クルス・オクタゴーノへ侵攻した敵機はもっと迅速に排除されて戦いの結果も違っていたかもしれないと、彼女は謝った。



  Next-次へ-  

  Prev-戻る-