05  エレラルド海

 ――何かがおかしい。

 防衛に徹していた敵の半数が離脱し、残りも数機を軸に攻勢を掛けて来たのだ。
 一体、何を考えているのか。この状況で戦力を分散するなど……
 ラウス中佐は、敵編隊の排除を命令した。だが、敵は果敢な抵抗を見せ、どうあっても軸となった数機には近づけなかった。そして、巨人機――LB-43の部隊の射程への接近を許してしまう。

 ――どういうつもりなのか。

 たとえあの数機の新型機を突入させても、それだけの火力ではLB-43の編隊は墜とせない。逆に集中砲火を浴びて全滅するのはあっちの方だ。
 だが、まさか……
 そうラウス中佐が思った矢先、その数機の敵機がそれを発射した。

 それらは急速にLB-43の編隊に近づいていった。数発が弾幕に阻まれたが、1発が編隊の近くまで迫った。
 そして、その光は突然現れ、瞬く間に周囲に広がっていった。そのまばゆい光にLB-43の巨体は次々と飲み込まれていった。
 戦場にいた人々は、その光をそれぞれの思いで眺める。ある者は歓喜。ある者は衝撃。ある者は苦渋。ある者は安堵。ある者は達成感で……。個々の思いを胸にその光を眺めるのだった。
 そして、彼はその光を見る事は出来ずに顔を背ける事しか出来なかった。



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