02  フィルド共和国  ティオニア郊外上空

 撤退命令が出た後、アランは僚機のウィリーと共に近くにいた味方を集め、北への脱出をはかった。だが、 敵の追撃は激しく、味方機は、どんどんその数を減らしていく。そして、前からも敵が現れたとき、状況は絶望的なものとなった。



 数少なくなった味方は、敵の群れに飲み込まれた。

 3機の黒い機体に追い回され、回避機動を繰り返すしかない。アラートは鳴りつづけ、 敵のミサイルや機銃弾が何度 も機体をかすめた。
 僚機のウィリーもまだ飛んでいるが、同じように必死に敵の攻撃をかわすだけで精一杯だった。いつものような軽口は全く聞こえてこない。また、味方機が堕ちる。あの無人機によって。奴らは目標を堕とすと、次の目標をへと向かっていく。そのたびに自分を狙う敵機は増えていく。 避けるだけで必死の中、気がつけば、10機以上の敵に狙われていた。
 急機動を繰り返し、敵のロックを何度もかわしていても、自機を狙う敵機は多すぎた。 複数の敵機にロックされ、アラートがけたたましくコクピットに鳴り響く。
 機体を懸命に振っても、今度ばかりは振り切れない。

 ――撃たれる。

 今、攻撃されれば、確実に堕ちる。 もう駄目かと覚悟した。



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