04  エレラルド海  空母「エクテシア」

 ――夫を、娘の父親の命を奪ったルージアを許す事は出来ない。特にあの無人機は……

 平和なときに人々の生活が自分の研究で少しは良くなって欲しいと夫と一緒にずっとやってきた。特に前の戦争で傷ついたルージアも含めた被爆国のために自分が作ったものが少しでも役に立つだろうとやっていたのに。
 しかし、もうそれはどうでもいい。もう戦争は始まったのだ。敵の新兵器に対抗するために自分の知識や経験が役立つなら喜んで協力しよう。
 もはや、ためらいなどない。確固たる決意と共にクレアは戦いの場へと降り立った。



 日常などもう、どこにもなくなってしまった。数日前まで空を見て笑っていた娘が、今はもう悲しい顔を浮かべるだけだという事に母親は振りむこうとはしない。
 かつては、母と娘は夕暮れになるとよく、一緒に空を見て笑っていた。だが、今は母は違うところを見つめ、娘はずっとうつむいたまま。

 ――あのソラは、もうなかった。



  Next-次へ-  

  Prev-戻る-