01  西フォリス海  蓬州国海軍A-MAs母艦「鳳光」

 西フォリス海の蓬州国海軍第1機動艦隊のA-MAs母艦「鳳光」に国連軍司令部の一団を引き連れた1人の男が降り立った。
 ――ウォルカー・ラウス少将。
 かつて、無人機部隊暴走事件を阻止し、前面核戦争を阻止した男。
 そして、対M.O.C戦争勃発以降には人類初のA-MAs部隊を率いてM.O.Cの侵攻を抑える事に貢献してきた男。
 精強な彼のルージア自由同盟軍の第1機甲強襲師団「グラージュ」もまた、今回のフォリス大陸反攻作戦に投入されていた。



 ルーフェニア海側からの国連軍主力による上陸作戦も無事成功を収めた。
 次に行われるジェンテ国軍との作戦打ち合わせのために彼は「鳳光」に降り立ったのだった。

 国土を失ってもなお、世界中でのM.O.Cの排除という揺るがぬ意志を持ち、戦い続ける男。
 そして、黎明期から歴戦のA-MAs部隊を統べる男。
 その来賓を艦隊は将兵を挙げ、敬意を持って迎えた。
 ウォルカーは、A-MAsパイロット達を前にしてこう語った。

 「我々はあの大地を取り戻すのだ」と。
 「これ以上、国土と国民の犠牲はもう見たくはない」と。

 そして、アキラ達若い兵士を前にして語った。

 「我が国では、諸君より若い子供が戦場に送られている。
  もとは人の命を惜しんで無人化が進められていたというのに…」と。
 「これ以上そんな国が増えない事と信じたい。

  そして、
 「貴国のような被爆国が増えないという事も…」と。

 今までのM.O.Cとの戦いを戦場でずっと見てきた彼の言葉。それは兵それぞれの心に入り、各々の意志となる。
 そして、ジェンテのパイロット達は最大限の敬意をこめて、敬礼を返した。
 課せられた義務、これからの戦い、残してきた家族。
 それぞれの思いは違うも、それは次の戦いで人々を守り、人の大地を取り戻すという強い意志となった。



 少将が艦を去っていくのを見届けながら、フィリップは言った。

 「世界に対する贖罪。そんなものを背負って戦って、あの人は… それでもあきらめていない」

 同じ祖国の血を引くフィリップのその言葉は、アキラにはどこか悲しくも、何か新たな決意をしているように思えた。



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