03  エレラルド海  空母「エクテシア」格納庫



 連合軍の反攻作戦は、もうすぐ始まる。
 目標はティオニア地方に建設されたルージアの核発射基地。兵力の再編を終え、エルニアスの第5艦隊を基幹とした大部隊がイニア島から南下を始めていた。その前衛を務めるのがエルニアス第2機動艦隊であり、第2空母航空団であった。
 そして、「エクテシア」はある密命を帯びていた。

 核による抑止の形成。
 クルス・オクタゴーノを失った今、ポース・オクタゴーノの射程外では連合軍はルージアによる核攻撃の脅威に晒される。その大きな理由の1つが連合軍が公に核を持っていないという事実であった。
 ティオニアの敵拠点への攻撃、あるいは艦隊防衛線での局地的な戦闘で連合軍も戦術核を使用し、新たな抑止力を形成する事。それが「エクテシア」の帯びた密命だった。

 ――何だそれは。

 核を自分たちも持っていると力を誇示すれば、敵も撃っては来ない。
 そんな狂った――MADな理屈が戦いの中で成り立つのか。撃ったら撃ちかえす戦場で……
 軍上層部で、もしくは連合国の首脳たちの間でどのような駆け引きがあり、何故このような決定がなされたのかはわからない。
 だが、末端の自分たちパイロットは、その命令に従うしかない。



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