06  エレラルド海  空母「エクテシア」甲板

 甲板を回り、部隊の現状や空気を肌で感じ、コストナー大尉の言葉の意味を再確認した。
 ここで、この「エクテシア」では、甘えも迷いも通用しない。パイロット達は勿論、甲板要員ですら他の部隊とは違う空気の中で任務に当たっていた。
 皆、確固たるものを持ってこの艦に乗っているように感じられた。

 甲板後部に辿り着くと、そこはまたこの艦の雰囲気とは違った空気感の場所だった。
 デッキの隅に1人の少女がいたのだ。
 何故この空母に民間人の、しかも少女がいるのか。周りにいる人間は黙々と自身の仕事をしていて、特に気にするようでもなかった。
 少女は悲しげな表情を浮かべながら、夕日の沈む西の空をじっと1人で眺めていた。悲愴と哀愁。そんな空気を漂わせながら。近くにいた甲板要員をつかまえて聞くと、この少女は敵のUACVに対抗する新戦術のために軍に協力しているリーバル博士の娘なのだという。
 数日前からこの空母にいて、毎日夕方になると1人でずっとあの調子で何も言わずに空を見上げているらしい。しかし、何故そうしているかは誰も知らないという事だった。
 誰も聞いた事はないのだという。

 アランは、少女に近づいていった。ウィリーは軽く制したが、彼はかまわず
 「ここで何をしているんだい?」
 と、少女にそっと尋ねた。
 すると少女はアランの方に顔を向け、沈みゆく夕日を見つめていたその虚ろな目で彼の目をじっと見つめた。
 思わずアランは顔を背ける。少女は1度うつむき、そして後ろに向き直って艦内へ通じる扉の方へと走っていった。
 唖然とするアラン。ウィリーは、やれやれという感じで相棒の肩を軽く叩いた。

 そんな2人の後ろで日は洋に沈んでいく。空は、少しずつ暗くなっていった。
 この新天地での空は、今までよりもさらに厳しいものになるであろう。そう考えながら、2人は夕日が沈む西の空を眺めるのだった。



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