03  フィルド共和国北部シュテイル市  メサリナ難民キャンプ

 クレア・リーバルは、娘のエミーと共に北部の都市シュテイルの郊外の難民キャンプに身を寄せていた。
 ティオニアから脱出する市民と共に必死にここまで来た。本国への空路での帰国の申請をしているが、政府も相当混乱しているらしく、未だに許可が下りない。さらに、北へ足を運んでもよかったが、その気力が彼女にはなかった。

 あの日のショックからか、娘は言葉を失った。あの日以来、何を話しかけても答えない。
 何もショックだったのは、娘だけではない。目の前で夫を失ったのだ。娘と同じようにずっとここで塞ぎこんでいたかった。そして、数日はそうして過ごした。

 しかし、開戦から2週間目程がたった日に軍のヘリが難民キャンプにあらわれ、銃をもった人々が私たちのもとへやって来た。
 彼らは言った。敵のAI兵器に対抗するために私の力が必要なのだと……
 あの日、私たちを襲ったあの黒い機体。あれもそのAI搭載型の無人兵器であったという。

 断る理由など何もなかった。

 行き先は、メサリナ海軍の艦隊であると聞かされた。敵の新型UCAVを無力化させる作戦に協力して欲しいのだと、軍人は言った。



  Next-次へ-  

  Prev-戻る-